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月澄むや狐こはがる児の供

(其便)

(つきすむや きつねこわがる ちごのとも)

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 元禄7年9月28日、51歳。芭蕉最後の俳筵での作。『芭蕉翁追善之日記』によれば、「畦止亭にうつり行、その夜は秋の名残をおしむとて七種の恋を結題にして、おのおの発句しける。其一 月下送児」として掲出されている。つまり、この句は「七種<ななくさ>の恋」と題する課題に対して答えた題詠であった。

月澄むや狐こはがる児の供

 ここに児<ちご>は単なる児童ではない。男色趣味の相手としての男子である。だから、「七種の恋」の一つとして同性愛を詠んだもので、大変 に艶めかしい。「稚児の供」はもう一人をさすのではなく稚児そのもの。
 月明りの夜、稚児は狐が出ないかと怖がっている。恋を知りそめし頃の少年の初々しい気分を月と狐とを題材として表現したものだが、芭蕉の他のどの作品にも例の無い表現といっていいのかもしれない。