芭蕉db
   夕方雨やみて、処の何がし舟にて
   江の中を案内せらるる

夕晴れや桜に涼む波の華

(真蹟懐紙)

(ゆうばれや さくらにすずむ なみのはな)

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 元禄2年4月。『奥の細道』旅中、象潟での句。

夕晴れや桜に涼む波の華

 夕日に輝く象潟の海の波を、西行法師ゆかりの桜の木の下で見ていると、それも爛漫の花のように美しい。西行の歌「象潟の桜は波に埋れて花の上漕ぐ海士の釣り舟」に触発された句。「波の花」といえば、日本海では冬の寒波強風にあおられて飛散する水泡をいうが、ここの「波の華」は金波銀波の波が輝く様子を言った文字どおりの華である。