芭蕉db
蛇食ふと聞けばおそろし雉子の声
(花摘)
(へびくうと きけばおそろし きじのこえ)
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元禄3年。其角の句集『花摘』に、「『
うつくしき顔掻く雉子のけ爪かな
』と申したれば」としてこの句が掲出されるので、一句は其角を受けての句であることが分かる。
『芭蕉翁全伝』によれば、この句は伊賀から膳所にいく途中で半残に宛てた書簡中の句だというが、その書簡は見当たらない。
蛇食ふと聞けばおそろし雉子の声
雉子といえば、「焼け野のキギス(雉子のこと)、夜の鶴」と言って、子を想う母の愛情にたとえられる。また、妻呼ぶ鳥として夫婦愛の象徴でもあった。しかし、美しい女性の顔を引っかいたり、まして蛇まで食ってしまうと聞けばこれはただならない。雉子の声にロマンばかりを感じるのは如何なものか?王朝のロマンを逆手に取ったところが俳諧なのである。
三重県上野市西山西山小学校跡にある句碑(牛久市森田武さん撮影)