芭蕉db

桂男すまずなりけり雨の月

(如意宝珠)

伊賀松尾氏 宗房

(かつらおとこ すまずなりけり あめのつき)

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 寛文9年、26歳の若い作。伊賀上野時代の作。

桂男すまずなりけり雨の月

 「桂男」とは月に住むという男のこと。月には500丈に及ぶカツラの大木があり、その根元にこの男は住んでいたという。姓は呉、名は剛といったいう。一句は、これが仲秋の名月の雨の夜、月が見えないのでこの月人男も月に住まなくなった、月も澄まないので、というのである。棲むと澄むをかけ、しかも『伊勢物語』から「男すまずなりにけり」を取ってきて複雑に掛け合った談林風駄洒落の一句。