芭蕉db

雁さわぐ鳥羽の田面や寒の雨

(西華集)

(かりさわぐ とばのたづらや かんのあめ)

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 元禄4年冬、48歳。支考によれば、「此の句は武江にありし冬ならん、寒の雨といふ名の珍しければ、おのおの発句案じたるに、寒の字のはたらき、此の句に及びがたし」(『西華集』)とあるから、題詠であって嘱目の吟ではない。
 愚管抄の著者慈円の歌「大江山傾く月の影さへて鳥羽田の面に落つる雁がね」(『新古今和歌集』)など鳥羽田と雁という定型を寒の雨と融合させたのであろう。

雁さわぐ鳥羽の田面や寒の雨

 冷たい寒の雨が降りしきる中、鳥羽田では雁がしきりと集まって啼き交わしている。鳥羽は、鳥羽・伏見の鳥羽。鳥羽田は雁と結び付けられて歌われることの多い地。