芭蕉db

稲こきの姥もめでたし菊の花

(笈日記)

(いねこきの うばもめでたし きくのはな)

稲こきの姥もめでたし庭の菊

(芭蕉翁真蹟展観録)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 元禄4年秋。彦根の農家で。
 真蹟写には、「服部氏潜国氏おもひかけず道のほとりにて出あひ侍りて、北村何某のもとへ導かれけるに、松・紅葉住家を囲み、菊・鶏頭庭に乱れて、秋のものどもなどとり入れゆゆしく見え侍れば」とある。
 伝によれば、「奥の細道」以来の上方生活を切り上げて、最後の東下の旅に大津を出発して、近江平田の明照寺の李由を訪ねていく道すがら、服部何某(俳号潜国)に会い、彼の案内で北村何某の亭に連れられていったところ、その庭に菊や鶏頭の花が一面に咲いていたという。その庭に続く田圃で年老いた女が稲こきをしていたのであろう。菊は長寿の花とされているから、庭前に咲き誇る菊を愛でる挨拶吟に長寿の老女を読み込んだものらしい。 挨拶の達人芭蕉の面目躍如の句。

稲こきの姥もめでたし菊の花

 庭の菊の花が大変美しい。菊の花は古来長寿のめでたい花とされているが、この菊の利益であの田んぼでいねこきをしている老婆はあんなに元気です。