芭蕉db
   寄李下

稲妻を手にとる闇の紙燭哉

(続虚栗)

(いなづまを てにとるやみの しそくかな)

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 貞亨4年夏。『三冊子』によれば、「この句、師のいわく、門人此の道にあやしき所を得たるものにいひて遺す句なりとなり。そのあやしきをいはんと、取物かくのごとし。万心遣ひして思ふ所を明かすべし。」とある。なお意味不明ではあるが、門人李下に、李下の句の評価を与えたのである。

稲妻を手にとる闇の紙燭哉

 李下よ、君の句は、闇夜に紙燭を掲げて灯りを点けるのに、稲妻を手にとって掲げるようなあやしさがあるよ。誉めているのか、諌めているのか不明であるが、李下の表現が少々大袈裟だといっているのかもしれない。
 紙燭とは、屋内で用いるたいまつのこと。松脂のついた松を燃やす。下部を紙で巻くところから紙燭というが、脂燭とも書く。