芭蕉db

夏来てもただひとつ葉の一葉かな

(真蹟懐紙/笈日記)

(なつきても ただひとつばの ひとはかな)

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 元禄元年、45歳。『笈の小文』の旅の帰路岐阜付近の山中にて。

夏来てもただひとつ葉の一葉かな

 ひとつ葉は、ウラボシ科の常緑シダ植物。本州南部以南に分布。硬くて長い根茎から柄の長い葉を一枚ずつまばらに出す。葉身は長さ20〜30センチメートルの披針形で革質、裏面に白色の星状毛を密生する(「大字林」)。
 今は夏。四囲の樹木や草たちは葉を増やし枝を茂らせているというのに、一つ葉だけはこの季節になっても一葉のままである。芭蕉もまた独り。一つ葉の淋しい気持ちがよく分かる。自身の感情を一つ葉に託して詠んだ。


岐阜市長良法久寺法久寺。句碑のまわりにヒトツバが群生している。牛久市森田武さん提供