芭蕉db

昼顔に昼寝せうもの床の山

(韻塞)

(ひるがおに ひるねしょうもの とこのやま)

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 貞亨5年夏(6月7日と推定されている)、彦根から岐阜への途次、床の山から彦根の門人李由宛に送った書簡。寄らずに立ち去る挨拶吟。『韻塞』に「東武吟行のころ、美濃路より李由が許へ文のおとづれに」、また『泊船集』には「大堀より李由が方へ文通にて、すぐに美濃路に趣き給ふの句なり。」とそれぞれ前詞がある。
『笈の小文』の旅の帰路、この日、芭蕉は6月4日に大津を発って、近江愛知川(えちがわ)(6/5)、美濃赤坂(6/6)を経由して岐阜に入ったもの。

昼顔に昼寝せうもの床の山

 あなたのいる床の山にお寄りして、いっしょに一休み昼寝でもして旧交を温めたいのですが、故有ってお会いできません。立ち寄らずに立ち去る言い訳の挨拶句。床の山は滋賀県彦根近くの鍋尻山(鳥籠山<とこさん>)で歌枕。昼顔と昼寝の韻を踏んだ上で床をかけ、それが彦根をさすという技巧が入っている。技巧を入れることでパロディ化した句。
 


滋賀県彦根市原町原八幡神社境内の句碑。牛久市森田武さん提供