芭蕉db

年々や桜を肥やす花の塵

(蕉翁全伝)

(としどしや さくらをこやす はなのちり)


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 元禄4年3月23日。万乎の別亭で開かれた花見の折りの半歌仙。ここに糸桜の見事な老木があったという。崇徳上皇の歌に「花は根に鳥は古巣にかへるなり春のとまりを知る人ぞなき」(『千載集』)がある。一句は、これを意識して作られている。ただし、崇徳上皇の歌とは全く異なって、万乎の家系の永続を詠った挨拶吟としているのである。

年々や桜を肥やす花の塵

 年年歳歳花が咲き、その花びらが根元に落ちて、やがて肥やしとなって木を肥やす。これによってこんなに見事な花が咲いている。当家の栄えるのもまさにこの桜と同じだ。