芭蕉db
   勢田に泊りて、暁石山寺に詣で、
   かの源氏の間を見て

曙はまだ紫にほととぎす

(伝真蹟画賛)

(あけぼのは まだむらさきに ほととぎす)

曙やまだ朔日にほととぎす

(真蹟草稿)

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 元禄3年4月1日。石山寺で紫式部が『源氏物語』を執筆したといわれている「源氏の間」を拝観した。ただし、源氏の間のいわれは怪しく、観光用に言い伝えられたものである。


石山寺の句碑


曙はまだ紫にほととぎす

 「曙」は言うまでもなく、清少納言の『枕草子』の「春は曙。やうやう白くなりゆく山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」から取ったもの。
 源氏の間を見ていると、まだ春の陽気が残っているものの、ちょうどホトトギスの声が聴かれて夏の到来を感ずることだ、というのである。『源氏物語』ではなく『枕草子』を引用していたり、季節の記述が錯綜していたりしてすっきりした句とは言いがたい。