芭蕉db

東西あはれさひとつ秋の風

(真蹟懐紙)

(ひがしにし あはれさひとつ あきのかぜ)

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 貞亨3年秋。この年8月、去来は後に早逝する妹千子<ちね>と『伊勢紀行』の旅をした。その跋文に添えて贈った句。その千子は、貞享5年5月15日に身罷った。芭蕉は、これを悲しんで「無き人の小袖もいまや土用干」と詠んで送った。

東西あはれさひとつ秋の風

 東は江戸の芭蕉を、西は去来兄妹、またはそれぞれの旅を指す。西東と違っても旅情は一つのものだ、まして悲しい秋であってみればなおさらだというのである。
 『芭蕉句選』では、

東西あはれも同じ秋の風

 また、『笈日記』では、

東西あはれさおなじ秋の風

となっている。