芭蕉db

九たび起きても月の七ツ哉

(雑談集)

(ここのたび おきてもつきの ななつかな)

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 元禄4年江戸。秋の夜長。

九たび起きても月の七ツ哉

 秋の夜は長い。文明のなかったこの時代の夜の長さは現代の想像をこえる。もう夜が明けたかと思って起き上がってみるが、まだ夜明け前のようだ。ここで「九たび」は実際に九回起きてみたということではなく、何度もという意味であろう。「七つ」は時刻では午前四時ごろになるが、ここは月の時計でという意味なので午前四時ではなく「夜明け前」の意と解釈される。一人寝の寂しさも句の裏に隠されているようだ。