芭蕉db
   あるところに旅立ちて、舟の中に
   一夜を明かし、下弦の月のあはれ
   なる暁、篷より頭出だして

明け行くや二十七夜も三日の月

(真蹟自画讃/夜話ぐるひ)

(あけゆくや にじゅうしちやも みかのつき)

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 貞亨3年秋。この年に旅をしたという記録は見当たらないので、どこかへの旅行記を著すほどの大袈裟なものではない小旅行であったのであろう。『芭蕉庵小文庫』では「常陸へまかりけるとき船中にて」とあるからこの川は利根川と思われる。そういえば、江戸元禄の時代、関東地方は舟運が相当に発達していたので、大河の付近では比較的容易に旅行ができたらしい。

明け行くや二十七夜も三日の月

 曙の空に浮かんでいる年取った27日の月ではあるが、まるで三日月のようにも見えるというのである。明け行く空に光っている月なので、宵に出る三日月と見まちがうのである。


埼玉県加須市不動岡総願寺の句碑(牛久市森田武さん撮影)

なお、この句には、上五が「あけぼのや」で始まるもの(『蕉翁句集』)がある。

あけぼのや二十七夜も三日の月


千葉県香取郡小見川水神宮の句碑(同上)