S40
前ぼんとぬけたる池の蓮の實
咲く花にかき出す椽のかたぶきて ばせを此前句出ける時、去來曰、かゝる前句をのがさずつけんにハいかゞと*、先師の付句を所望しけれバかく付給ふなり。
咲く花にかき出す椽のかたぶきて:「椽<たるき>」の意味が不明で、「縁 =縁台」の間違いではないかと言われている。だとすれば、これは花見の縁台のこと。「かき出す」は花見のためにどこかの小屋から縁台を担ぎ出してきたのであろう。ところが生憎これが足が萎えていて傾いてしまっている。花見の場所は、蓮の田の脇。ぽんと抜けた蓮の実は去年の 秋に実ったそれであろう。
かゝる前句をのがさずつけんにハいかゞと:この前句に付けられる人がいなかったので、芭蕉にお願いして付けてもらった。