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さるミの撰の時●一句の入集を願ひて、數句吟じ來れど取べきなし*。一夕先師のいざくつろぎ給へ。我も臥なんとの給ふに、御ゆるし候へ。じだらくに居れば涼しく侍ると申。先師曰 、是ほ句也。ト、今の句につくりて、入集せよとの給ひけり。
じだらくに寢れば涼しき夕哉:説明の必要の無いほど明快な句。
さるミの撰 の時●一句の入集を願ひて、數句吟じ來れど取べきなし:欠字部分は「宗次」、不明の人。『猿蓑』に入集して欲しいといって投稿してきた作品のどれもはかばかしくない。あれかこれかとやっているうちに疲れたので、一休みしようということになった。そこで、去来が「自堕落に居れば涼しくなります」と言ったところ、芭蕉はそれが発句だといって、この句ができて宗次の名で入集したという。