S15
散銭も用意がほ也はなの森 去來先師曰、花の森とハ聞なれず。名處なるにや*。古人も森の花と社申侍れ*。詞を細工してかゝる拙き事いふべからずト也*。
散銭も用意がほ也はなの森:「散銭」は神社や仏閣への賽銭のこと (井筒屋初版本では「賽銭」)。「花の森」という所へ行って、お金を上げて来ようというのであろうが、「花の森」の意味が不明なため全体の意図が見えない一句となった。
先師曰、花の森とハ聞なれず。名處なるにや :<せんしいわく、はなのもりとはききなれず。などころなるにや>。「森の花」とは聴きなれないが、名所旧跡でもあるのかい?。
古人も森の花と社申侍れ:<こじんももりのはなとこそもうしはべれ>と読む。「花の森」とは何のことか?古人は「森の花」とは言っているようだが?
詞を細工してかゝる拙き事いふべからずト也:言葉を小細工するような拙いことをしてはならない!