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田のへりの豆つたひ行螢かな 元トハ先師の斧正有し凡兆が句也*。猿ミの撰の時、兆曰、此句見る處なし、のぞくべし。去來曰、へり豆を傳ひ行螢火、闇夜の景色風姿ありと乞ふ。兆ゆるざず。先師曰 、兆もし捨バ我ひろハん。幸いがの句に似たる有*。其を直し此句となさんとて、終に(萬乎注)が句と成けり。 注)萬乎は欠落部分
田のへりの豆つたひ行螢かな
元トハ先師の斧正有し凡兆が句也*。猿ミの撰の時、兆曰、此句見る處なし、のぞくべし。去來曰、へり豆を傳ひ行螢火、闇夜の景色風姿ありと乞ふ。兆ゆるざず。先師曰 、兆もし捨バ我ひろハん。幸いがの句に似たる有*。其を直し此句となさんとて、終に(萬乎注)が句と成けり。
注)萬乎は欠落部分
元トハ先師の斧正有し凡兆が句也 :「斧正」は詩文などを添削して正すこと。この句は、凡兆の作で、芭蕉が朱を入れた句だという。
幸いがの句に似たる有:<さいわいいがのくににたるあり>。伊賀の門人の句に同じようなのがったから、これを芭蕉がもらって、伊賀の門人の作とするというのである。実際、万乎の作として「猿蓑」に「田の畝の 豆つたひ行螢かな」として入集させた。著作権の未熟な社会での処理風習。