芭蕉db
(裏見の瀧 元禄2年4月2日)
廿余丁山を登つて滝有*。岩洞の頂より飛流して百尺、千岩の碧潭*に落たり。岩窟に身をひそめ入て、 滝の裏よりみれば、うらみの滝*と申伝え侍る也 。
(しばらくは たきにこもるや げのはじめ)
元禄2年4月2日。この日は快晴であった。裏見の滝を見物の後、那須・太田原へ行く。夕刻には、雷雨強烈、塩屋町に到着してそこで一泊。ただし、あまり宿がひどかったので無理に願い出て庄屋の家に泊めてもらった。
勇壮な「裏見の滝」
廿余丁山を登つて瀧有:<にじゅうよちょうやまをのぼってたきあり>と読む。一丁は1町で、この時代には約108m程度の距離。よって、廿余丁は2km余だが、現代の地図で調べて見ると東照宮から裏見の滝までの距離は約2.5km。
うら(裏見)の瀧: 滝の岸壁に窪んだ空間があって、ここに入ると滝水の落下するのが見える。そういう滝として、この時代、「裏見の滝」は華厳の滝よりずっと有名だったのである。
全文翻訳
東照宮からおよそ二・五キロほど上がったところに滝がある。水は、岩壁の頂上から飛び散って三十メートル。ごつごつした岩でできた真っ青な滝壺に落下する。岩窟に身体をよじって入ると、裏側から滝を見られるので「裏見の滝」と言い伝えられている。
暫時は滝に籠るや夏の初