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芭蕉db
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笈の小文
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(渥美半島へ)
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あまつ縄手*、田の中に細道ありて、海より吹上る風いと寒き所也。
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(ふゆのひや ばじょうにこおる かげぼうし) 
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冬の日や馬上に凍る影法師
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 初案は「冬の田の馬上にすくむ影法師」だったらしい。後に「さむき日や馬上にすくむ影法師」、「すくみ行や馬上にこおる影法師」を経て最終稿を得た。天津縄手(長い畦道を指す)に沿っての吟であれば嘱目されるものとして寒々しい冬の田んぼしかなかったであろう。視覚が支配的な初案から推敲後への整然さは際立った対称であるが、寒さは初案の方があるように思われる。
天津縄手:<あまつなわて>と読む。豊橋から天津までは約12キロぐらい、天津から田原町までの4キロほどの間は、渥美湾に沿う縄手道、これが天津縄手。ここは海上から吹いてくる季節風が田面を通ってきて冬は極めて寒い。この地方では、「養子に行くか天津の縄手を裸で飛ぶ」かといわれ、共に辛いことの代名詞として使われたという。

冬枯れの天津繩手(牛久市森田武さん撮影)

「すくみ行や馬上にこおる影法師」の句碑(牛久市森田武さん撮影)