談林俳諧が急速にその勢いを失いつつある、いわば混乱期にあって、甲州の山中で世の動きから懸け離れている麋塒に新しい風の存在を説いているところが圧巻である。
貴墨忝致二拝見一、先以御無為被レ成二御坐一、珍重奉レ存候:<きぼくかたじけなくはいけんいたし、まずもってごむいにござなされ、ちんちょうにぞんじたてまつりそうろう>と読む。お手紙をかたじけなく拝見しました。お変わりも無く結構です、の意 。
尤感心不レ少候へ共、古風之いきやう多御坐候而、一句之風流おくれ候様に覚申候:<もっともかんしんすくなからずそうらえども、こふうのいきようおおくござそうろうて、一句の風流おくれそうろうようにおぼえもうしそうろう>。拝見したあなたの句は中々良いのですが、少し古臭くて時代に遅れているように思います。
先は久々爰元俳諧をも御聞不レ被レ成:<まずは久々ここもとはいかいをもおききなされず>。あなたは田舎に居て最近の俳諧を聞いていないでしょうから。
所々思入替候ヲ:諸所方々で俳諧革新運動が起きているのに、の意。それでも江戸の宗匠らは、まだ3年も4年も前の(談林風の)俳諧に馴染んでいるのです。