洒堂から提灯とロウソクの差し入れがあったことへの謝礼。幻住庵にはいずれも必需の品である。
国分山の山守と成りかゝり候へば、市中の御案内なつかしく候:幻住庵のある国分山の山守になりかかってしまったので、 町中からのお便りは懐かしいことです、の意。芭蕉は、4月6日に幻住庵に入ったばかり。
月無頃の畔伝ひて候:<つきなきころのくろつたいてそうろう>。(頂いた提灯とロウソクの芳志によって)月の無い晩でも田の畦道が歩ける、というのであろう。
芥子の御句:「知恵の有る人には見せじ芥子の花」の句の、知恵の2字が良いというのである。
世上之小利には何方も草臥候:<せじょうのしょうりにはいずかたもくたびれそうろう>と読む。巷間詠まれている句などは、見ているだけで草臥れてしまいます、の意。
二句の境、愚意落不レ申儘:<にくのさかい、ぐいにおちもうさずまま>と読む。これら二の句の良し悪しについてはまだ私の意志は定まっておりません、の意 。
御登山之砌極可レ申候:<ごとざんのみぎりきわめもうすべくそうろう>。その結論については、国分山に来ていただいたときにはお話しましょう。
庵も賜物、富貴に候。怒誰丈御誘、せつに候:ここ幻住庵もみんなが色々持参してくれるので富んでいます。怒誰ときたらさかんに邸に招待してくれます。