杉風が、寸雪(不詳)から句の批評を依頼されて、それについて芭蕉に尋ねてきた手紙への回答文。寸雪の冒頭の句は良いので、これらの句は「桃隣集」や「反古さらへ」などの予定の句集にはどんどん採録していったら良いと書いている。
梶の葉に書こともたぶ我身哉:梶の葉には七夕の折、歌などを詠んで、願いを成就させる風習があった。作者は、もうそういう願いも無くなった、と嘆いている。
かヾやかしき発句、なるほどむざとしたる句共にても無二御座一候:すばらしい発句です。その辺に転がっているようなものではありません、の意。
此くらひ、世間上手なみかと被レ存候:「くらひ」はレベルの意 で、この句のよさは世間の上手並みのレベルに達しています、の意。。
梶の葉ヲ出かされ候様に被レ存候:「ヲ」でなくて「は」ではないか?「梶の葉」を主題にしたのは出かしたことのように思われる。
猶其元にても御考可レ被レ成候:あなたもこの句を編集に考えてみてはどうでしょう、の意 。
桃隣集にも入可レ申:桃隣編纂の「集」の出版が計画されていた。この梶の葉の句をその集に入れてはどうか、の意。つづいて、同様に「反古さらへ」にも同様に、人柄よく、句柄のよいものは入れたらよいというのである。
され共深川集、庵に縁なき衆は入申まじく候:ただし、「深川集」には、芭蕉庵に縁のない人の作品は遠慮願いたい。