江戸から膳所水田正秀宛に書いた書簡。湖南滞在の謝礼をこめて、そのなつかしさを強調している。久しぶりに帰った江戸ではあったが「北風南風のせめにあひ」どこか寒い風が吹き抜けてもいたのである。やがて「閉関の辞」を書く時に至るのである。
さても山川万里、百日あまりと覚申候:<・・さんせんばんり、・・おぼえもうしそうろう>と読む。遠くお別れしてから百日あまりが経ちました、の意。
昌房子・探子・及肩老、さだめて可レ為二御無異一と存候:<しょうぼうし・たんし・きゅうけんろう、さだめておんぶいたるべくとぞんじそうろう>と読む。昌房・探子・及肩はいずれも膳所門人。三人ともお変り無くお過ごしのことと存じます、の意。
めいめい書状むつかしく候間、つらりとよき様に奉レ頼候:彼らめいめいに書状を書くのは困難ですから、貴方からよろしくお伝え下さい、の意。
頓而茶時、嘸と御推量申候:<やがてちゃどき、さぞとおんすいりょうもうしそうろう>と読む。間もなくお茶の季節さぞや御忙しいことと拝察します、の意。膳所は、茶の産地だった。
此方あべちやあしく候に付ても:こちらでは駿河の安倍川のお茶を飲んでいますが、これがあまりよくないので、一層膳所をなつかしく思い出します、の意。