江戸から膳所水田正秀宛に書いた書簡。膳所門人から来た多数の手紙に返事を書く替りに正秀に代表してよろしく言ってくれるよう依頼している。
御袋様・御内・御子達、御無事御重年被レ成候哉:<おふくろさま・おんうち・おこたち、ごぶじにごちょうねんなされそうろうや>と読む。「御内」は奥様、の意。御家族の皆さんお元気で新年をお迎えなさいましたか、の意。
百里へ御馳走ぶり:<ひゃくりへごちそうぶり>と読む。「百里」は嵐雪の門人高野百里。百里が膳所を訪れたときの膳所の芭蕉門人が彼をもてなしたこと。
爰元盤子・桃隣一所に越年、打寄打寄御噂のみ申候:<ここもとばんし・とうりんいっしょにえつねん、うちよりうちよりおうわさのみもうしおうろう>と読む。ここ江戸では、支考・桃隣も同じ屋根の下で年を越しました。膳所のことばかり思い出しては話しています、の意。
愈風雅無二間断一御はげみ可レ被レ成候:<いよいよふうがかんだんなくおはげみなさるべくそうろう>と読む。益々俳諧の道に精を出して下さい。
大かた膳所風雅一所にさた有レ之候:<おおかたぜぜふうがいっしょに沙汰これありあそうろう>と読む。「さた」は噂や評判、一所は江戸と一緒の意。膳所の俳壇のことは江戸でも同じように評判です、だから大いに努力して下さいという激励。
つらりと御断り、貴様へまかせ申候間、可レ然奉レ頼候:膳所の全ての人々からお便りをいただきましたが元気でやっていますので皆さんに貴殿からよしなにお伝え願いたい、の意。可レ然奉レ頼候は<しかるべくたのみたてまつりそうろう>と読む。
昌房は御内方ふしぎに本復故、其悦申入候:<しょうぼうはごないぎ・・・ほんぷくゆえ、そのよろこびもうしいれそうろう>と読む。「昌房」は膳所門人。彼の奥方が本復したと聞いたので、お慶びの書状は差し上げました、の意。
猶々近年之内、又こそとたのしみ申し候。先は春か秋の間上京申すまじく候間:近いうちにまた膳所に行きたいと考えていますが、まず今年の春とか秋とかいう時期には京へ行く計画は有りません。
其内御精御出し可レ被レ成候:<そのうちごせいおだしなさるべくそうろう>と読む。それまでせいぜい俳諧に精を出して下さい、の意。