芭蕉db

菅沼外記(曲水)宛書簡

(元禄6年2月8日 芭蕉50歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


不悟之御無心申事出来致候*。其元御遣金御用ノ餘御座候はゞ、一両弐分御取替被成被下候はゞ可忝候*。必返進之合点に御座候*。少々難去内証のすくひ之事出来候故*、江戸むきのものには無心難申事故、御心底不看如此御座候*。委細は貴面可申上*。いまだ十三日迄は、得御見舞まじく候*。洒堂京着可仕候*。 以上
 尚々無理がましき事申進じ候。少急事に御座候間、当分御取替可忝候*。塵風払侘候*
菅沼外記様                                芭蕉

 深川芭蕉庵から、曲水に宛てた借金申し込みの書簡。冒頭の一文「不悟之御無心申事出来致候」は実に差し迫っている。この時期芭蕉にとって金銭の必要性といえば猶子桃印の肺結核の重篤化が最も考えやすい。そのための医者代や薬代が必要になったということであろうか。この頃から芭蕉の身辺には死の影がひそかに忍び寄ってくるのだが・・・。