深川芭蕉庵から、江戸在勤中の曲水宛書簡。怒誰の書状についての雑感。末尾に一部不明個所あり。
珎碩状為レ持被レ下辱奉レ存候:<ちんせきじょうもたせくだされかたじけなくぞんじたてまつりそうろう>と読む。珍碩の手紙を届けて下さりありがとうございます、の意。
折節対客取紛候間、留置候而一覧、重而返進可レ仕レ候:<おりふしたいきゃくとりまぎれそうろうあいだ、とめおきそうろうていちらん、かさねてへんしんつかまつるべくそうろう>と読む。このところお客が多くそれに紛れておりましたためご返事が遅くなりましたが、こうして一度にご返事申しあげます。
隠岐守様火之御番被二仰付一候由、乍レ懼目出度奉レ存候:<おきのかみさまひのおばんおおせつけられそうろうよし、おそれながらめでたくぞんじたてまつりそうろう>と読む。膳所七万石藩主本多隠岐守康嘉。彼が、京都の武家火消しの当番になったのでおめでたいというのである。
時節火事之さたも静成事に御座候へば、猶以珎重成御役義(儀)与、いづれも様御満足可レ被レ成候:<じせつかじのさたもしずかなることにござそうらえば、なおもってちんちょうなるおやくぎと、・・さまごまんぞくなさるべくそうろう>と読む。時節柄、火事が無くなれば、すばらしい仕事ぶりと、皆様満足されるのではないでしょうか、の意。
怒誰丈馬上にてゆれ不レ参候様に仕度候:<どすいじょうばじょうにてゆれもうさずそうろうようにつかまつりたくそうろう>と読む。怒誰には、馬上であまり揺られないようにして欲しいですね、の意。
様子により御鼻のかうやく御無心可レ申候:ようすによりおはなのこうやくごむしんもうすべくそうろう>と読む。御鼻のこうやくは、腫物の薬か?