- 芭蕉db
塵生宛書簡
(元禄2年8月2日 芭蕉46歳)
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書簡集/年表/Who'sWho/basho
- 御飛札*、殊に珍敷乾うどん弍箱被二贈下一*、不レ浅御志之義(儀)と忝存候事に候。如レ仰此度は得二御意一、珍重に存候。此地へ急ギ申候故、御暇請も不レ申残念に存候。然ば天神奉納発句之義(儀)得二其意一候*。無二別義(儀)御座一候。入湯仕舞はヾ*其元へ立寄申筈に御座候間、其節之義(儀)に可レ被レ成候*。猶其節御礼可二申伸一候条、不レ能レ詳候*。不宣*
- 八月二日 芭蕉
- 塵生雅丈
- 廻酬*
- 尚々遠方御志之段、不レ浅忝令レ存候*。貴面御礼可二申上一候
- 以上
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- 『奥の細道』の旅の途次山中温泉和泉屋久米之助宅から小松の塵生宛に宛てた書簡。塵生は旅の途中の芭蕉に宛ててうどんを贈り、また小松天神奉納句会の参加依頼をした。これに対し芭蕉は、中山温泉で湯に入って十分疲れを取ったら再び小松に行くと約束している。勿論実際には実行されてはいない。『曾良旅日記』8月5日にも、明日小松へ行くという予定が書き込まれているので、計画は本当にあったようだ。しかし、8月6日は朝からどしゃ降りだったようで、雨が計画を阻害したものらしい。
御飛札:飛脚便のこと
珍敷乾うどん弍箱被二贈下一:<めずらしきほしうどんふたはこおくりくだされ>と読む。塵生が乾麺を贈ったのである。
然ば天神奉納発句之義(儀)得二其意一候:<しからばてんじんほうのうほっくのぎそのいをえそうろう>と読む。発句の件は貴方の言う通りで結構です、の意。
入湯仕舞はヾ:<にゅうとうしまはば>と読む。十分に風呂に入って体力が回復したら、(そちらを再度訪問します)の意。
其節之義(儀)に可レ被レ成候:<そのせつのぎになさるべくそうろう>と読む。(委細は)再度小松を尋ねた時にしましょう、の意。
猶其節御礼可二申伸一候条、不レ能レ詳候:<なおそのせつおれいもうしのぶべくそうろうじょう、つまびらかあたわずそうろう>と読む。お会いしたときに御礼を申し上げますので、ここでは詳細は省きます、の意。
不宣:<ふせん>と読む。手紙文を簡略化したときに末尾に書く常套句。意を尽していない、の意。「不一」・「不尽」などに同じ
廻酬:<かいしゅう>と読む。返信、の意。
不レ浅忝令レ存候:<あさからずかたじけなくぞんぜしめそうろう>と読む。「令」は、使役表現で「・・・しめ」と読む。衷心より感謝申し上げます、の意。