芭蕉db

不玉宛書簡

(元禄6年春 芭蕉50歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


一巻熟覧、感吟不斜候*。近年武府之風雅、分々散々、適々邪路の輩も相見え候處*、微躯方寸相伝て*、辺国鄙のかたはらより*、かゝる風雅を見せしめ侍る、誠に殊勝の事に候。予曾以点削之断筆といへども*、遠国の志といひ、先年行脚の情難忘によりて*,聊評詞・脇書加のみ也*

芭蕉庵

                     桃青
元録(禄)六年春中*

 深川芭蕉庵から、山形酒田の医師不玉に宛てた書簡。不玉は『奥の細道』で芭蕉が酒田を訪れたときに入門した人。そのときの教えを守ってできあがった作品を送ってきたのである。添削をして金をせしめる金権俳諧から決別している芭蕉としては、この種の評詞を求める要求にはことごとく断ってきたのであるが、不玉の作句態度にほだされて添削をしたのである。