山岸半残宛書簡だが、前後が切れた断簡である。「楽丸」なる疝気の薬を送られてきたことへの礼状である。伊賀門人の作品が図抜けてすばらしいと誉めているが、身贔屓かさもなくば社交辞令か?
御芳翰忝愈無事珍重奉レ存候:<ごほうかんかたじけなくいよいよぶじちんちょうにぞんじたてまつそうろう>と読む。この手紙に薬が同梱されていたのであろう。
拙者成程息災疝気之心持は近年なきほど快覚申候:<せっしゃなるほどそくさいせんきのこころもちはきんねんなきほどこころよくおぼえもうしそうろう>と読む。「疝気」は腰痛肩こり、腸の不調など壮年期以降の病気。
是又楽丸可レ為レ力と別而待兼候處、被レ懸二御意一忝保養可レ致と大悦に存候:<これまたらくまる?ちからになすべきとべっしてまちかねそうろうところ、ぎょいにかけられかたじけなくほよういたすべきとたいえつにぞんじそうろう>と読む。「楽丸」は疝気の薬であろう。このところ持病の疝気が起らず快調なのは、この薬のおかげゆえ、欲しいと思っていたところへ送っていただき、これで持病治療できると大いに喜んでいます、の意。
去来集、追付出来申候:<きょらいしゅう、おっつけしゅったいもうしそうろう>と読む。「去来集」と言っているのは、この頃京都で、去来と凡兆が編集中の『猿蓑』を指す。間もなく発行されるであろう、の意。
伊賀之風流いづれもいづれも被レ驚候而、御手柄に候:<いがのふうりゅう・・おどろかれそうろうて、おてがらにそうろう>と読む。伊賀上野の皆さんの作品は抜群で、大いに驚嘆すべきすばらしいものです、の意。
重而集出し候半能足代と土芳子へも御伝成可レ被レ下候:<かさねてしゅういだしそうらわんによきあししろととほうしへもおんつたえなしくださるべくそうろう>と読む。ひきつづき句集を出版するによいさきがけになりますと、土芳にもお伝え下さいますように、の意。
花うつぼ・木免など:<・・・みみずくなど>と読む。いずれも半残の句。
土芳鹿の句:土芳の鹿の句。
園風子へ御申可レ被レ下候:<えんぷうしへおもうしくださるべくそうろう>と読む。「園風子」は、伊賀蕉門の人。(馬の絵を早く京都に送るように)と伝えて欲しいと言うのだが、松尾家で言いたいことが不明。
同名方:実家の松尾半左衛門のこと。