芭蕉db

惣七郎・宗無宛書簡

(元禄2年2月16日 芭蕉46歳)


 同姓方より之便之次手乍貴報落手*、貴面之心地いたし*、去年の一ノ宮の雨わすれがたく候*。魚くはぬ腹のさらさらとして*、土筆・よめ菜の萌出るにも、又野心とヾまらず候。住果ぬよの中、行処帰処、何につながれ何にもつれむ。江戸の人さへまだるく成て、又能因法師・西行上人のきびすの痛もおもひ知ンと、松嶋の月の朧なるうち、塩竈の桜ちらぬ先にと、そヾろにいそがしく候。うきよの人の大どしも我桜待日におなじからむ。宗無老、初夏御下り、貴翰御おもひ立可成候。拙者なしとて御とヾまり、御残難尽候。又時節も可有御坐候。
   道の具
 短冊百枚 是かつゑたる日、五銭・十銭と代なす物か
 筆箱一 雨用意ござ・鉢のこ 
  柱杖   是二色乞食支度
   ひの木笠・茶の羽織、如
  二月十六日 惣七郎様
        宗無様         ばせを

書簡集年表Who'sWho/basho


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 江戸深川から郷里猿雖と宗無に「奥の細道」の予定を知らせた書簡。