江戸第三次芭蕉庵から怒誰宛に書いた書簡。この頃怒誰は江戸に滞在していた。12日には怒誰が芭蕉を訪問し、作品などを紹介した模様である。
辱拝見、一昨珎敷御入来、本望之至奉レ存候:<かたじけなくはいけん、いっさくめずらしくごじゅらい、もんもうのいたりにぞんじたてまつりそうろう>と読む。お手紙拝見しました。また一昨日はおいで下さいまして本望でありました、の意。
御発句大に感吟仕候。是程迄御働とは夢々不レ存候:<おんほっくおおいにかんぎんつかまつりそうろう。これほどまでおはたらきとはゆめゆめぞんぜずそうろう>と読む。発句を拝見して感心しました。これほどまでの作品をなすとは思いも及びませんでした、の意。
麦、御在所之ものと存候へば、一入珎重忝奉レ存候:<むぎ、ございしょのものとぞんじそうらえば、ひとしおちんちょうにかたじけなくぞんじたてまつりそうろう>と読む。頂いた麦、膳所のものと思えば、珍重一入で忝けなく思います、の意。
曲水、来二日三日下着之由、少涼風能時節にて道中無二心元一事も無二御座一候:<きょくすい、きたるふつかみっかげちゃくのよし、すこしりょうふうよきじせつにてどうちゅうこころもとなきこともござなくそうろう>と読む。曲水が来月2日・3日に江戸に来るそうですが、おりしも涼風が立つ頃で道中の暑さも心配ないことでありましょう、の意。
日斜に及候間及二早筆一候:<ひななめにおよびそうろうあいだそうひつにおよびそうろう>と読む。日が陰ってきましたので、今日はこのくらいで。早々。
本屋へ申付候間、近々参上可レ仕候:<ほんやへもうしつけそうろうあいだ、きんきんさんじょうつかまつるべくそうろう>と読む。御依頼の書物、本屋へは注文致しましたので近いうちにお渡ししますのでお出かけ下さい、の意。