芭蕉db

知足宛書簡

(貞亨3年閏3月16日 芭蕉43歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


先日貴墨並短尺廿枚相届*、請取申候。愈御無事に御勤被成候哉、珍重奉存候。爰元別条無御座候。内々頃日者上京可致覚悟に御座候へ共*、何角障事共心にまかせず候而、いまだ在庵罷有候。夏之中には登り可申候間、其節立寄可御意候。
一、短尺大かた出来いたし候へ共*、爰元はかりそめにも出合遠方*、其上人々ケ様之事共に取込罷有候故*、延引に成候。拙者門弟共は皆々かかせ申候*。他筆宗匠共*のをまじへ可申と、是故少調兼候*。追付相調候而登せ可申候*
    壬三月十六日         芭蕉桃青 書判
  寂照老子*
尚尚髪剃壱丁、対一本*、被御意、誠忝奉存候*

(別紙)

追啓*申上候。此僧二人*、拙者同庵に而御座候。上京修業に被出候而、長除(途)草臥可申候間*、二三日御とめ休息いたし通候様に奉頼候。近比馴馴敷御事ながら*、行脚修業の僧に而御座候間、二三日御とめ、足を少やすめ候而御とをし被成可下候。今程御閙敷*時節に御座候間、如風様御方に御とめ被成可下候様に奉頼候*
大キウ和尚拝いたし度ねがいに御座候間*、其段も奉頼候。
    壬三月十六日         芭蕉桃青 書判
  下里寂照老子

書簡集Who'sWho/basho年表


名古屋鳴海の蕉門の弟子下里知足から依頼された江戸俳人達の揮毫した短冊20枚の準備状況などを知らせた書簡。また、芭蕉庵の近くに住んでいる乞食僧侶二人が上京する際に面倒見てくれるよう依頼した書簡でもある.芭蕉が知足のために、他流派の宗匠の揮毫した短冊まで集めて知足宛に送ろうという並々ならぬサービスは、『野ざらし紀行』の旅の途次に知足に彼自身並々ならぬ世話になった恩返しの意も込めてのことなのであろう。