芭蕉db

智月宛書簡

(元禄5年5月7日 芭蕉●歳)

 

書簡集年表Who'sWho/basho


一とせゆめうつゝのごとくに候。たがひに老のせめ来り、けふあすと云日も遠かるまじくと存候。儀仲庵のあつさも今おもひ出しの一くさにて御座候*。此方万大まかなる処に而、何事も不自由に御座候へば、御おんの程も一しほわすれがたく、御なつかしき計に御座候。大かたことしは江戸に足をつながれ候まゝ、又いつ御目にかゝるべきも難定候。
定光坊、御息災に御座候哉*。竹の子の折々申出し計に御座候*
一、白小袖御句、感心申候*。追善御所望之事、いかにも殊勝に存候*。乍去、拙者肝煎がたき所々御座候間、冬に成候而乙州下り候節、可然と存候*。其内の無常はそんに可成候*。めでたくかしこ。
     五月七日
 
 
   智月さま                    ばせを

 

 御意

kaisetsu.gif (1185 バイト)

 膳所の 智月尼から彼女の亡夫追善集発刊のための江戸蕉門からの句集めの依頼に、不可能を答えた書簡。