芭蕉db

菊の後大根の外更になし

(陸奥千鳥)

(きくののち だいこんのほか さらになし)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 元禄4年頃の作だが詳しい年代は不祥。なお、この時期の制作年次不明のものとして、58句がある。

菊の後大根の外更になし

 秋、菊の花が散ってしまえばもはや花はない。なればこそこの国の文人墨客は菊を愛で、菊の散ることを悲しんだ。その代表例は「是花中偏愛菊 此花開後更無」(『和漢朗詠集』)である。芭蕉は、菊の後に「大根が有るではないか」と主張するのである。もとより大根の花は春であって、菊の後に咲くわけではないから、大根の本領である、あのみずみずしい味と白さの肉にある。菊の後「大根の外」には何も無いと強調することで、古典的価値をパロディー化したのである。俳諧の本領を発揮した作品。
 芭蕉には大根の名歌が多い。その一例、

身にしみて大根からし秋の風

鞍壷に小坊主乗るや大根引