消費者行動論 #6  2002/11/14

■メッセージ紹介

●「恐怖喚起コミュニケーション」が1番怖く感じた。「今のあなたの状況のままじゃ,今後,体が悪化していく」など,言われたら,やはり不安になるし,弱気になってしまう。この方法はコミュニケーションではなくて,おどしに近いような気がした。消費者の弱いところをつくのは,商品を売るためだといっても,信頼感はないので,さみしい気がした。

●ドアインザフェイス技法は,消費者の心理をついた方法だと思いました。覚えておいて,もし,この様なパターンで売り込まれたときに思い出して対処できるようにしたいです。

●FITDやDITFなどは人間の心理をうまく利用している,いやらしい手口だと思う。だが,自分が今後勧誘する立場についたら,今日の講義を生かそうと思う。

●商品の説明をするときに,長所とともに短所も伝えるというのは意外でした。しかし,短所も伝えることで信頼してもらい,メーカーとの長いつき合いなどを考えてのことだと知り,とても納得できました。

●メッセージのありようについて,就職の面接も同じなので,自分自身が商品なのだと強く感じました。よく考えると,就職は人の売買とも言えるような気がします。


2.消費者行動の心理学

2−1.問題解決としての購買意思決定

2−2.消費者の知覚

2−3.消費者の動機づけ

2−4.ライフスタイルと消費者行動


2−5.消費者の態度形成と変容

ある商品やサービスへの態度
 =その対象に対する判断や感情などの評価の全体
 ・方向性:好き/嫌い,良い/悪い
 ・強さ:大好き,嫌いではない,など

▼広告戦略と態度変容
・ある属性に関する評価を改善させる
・ある属性の重要性を変化させる
・全く新しい属性を付加する
・競合商品への評価を低下させる

▼説得的コミュニケーションと態度
・メッセージの送り手
 ・信憑性=専門性+信頼性

・メッセージのありよう
 ・一面呈示と両面呈示
  ・両面呈示=長所とともに短所も伝える
 ・恐怖喚起コミュニケーション

▼段階的勧誘法
・フットインザドア技法 (FITD)
   はじめに小さな依頼に応じさせ,その後,
   本命の大きな依頼をする
・ドアインザフェイス技法 (DITF)
   先に大きな依頼をわざと断らせてから,
   譲歩する形でより小さな本命の依頼をする

  第1段階     第2段階  
FITD get Yes!
(小さい要求)
get Yes!
(本命の要求)
DITF get No!
(大きい要求)
get Yes!
(本命の要求)


━━━━━━━━前回ここまで━━━━━━━━





▼態度と行動の関連性
・フィッシュバインとアイゼンの説明

※「購買への態度」であって「商品への態度」ではない
※社会規範=“人からどう見られるか”

・その他の要因
 ・状況要因
  ・実際の店頭場面での状況によって行動が左右される
 ・個人的要因
  ・その時の個人的状況によって行動が左右される
 ・態度形成のなされ方
  ・体験に基づいて形成された態度は,行動との
   結びつきが強い



2−6.消費者行動における状況要因

▼価格判断における状況要因
  同じ商品が同じ価格で売られていても,状況によって
  高く感じたり安く感じたりする
  ・周りのものの価格と比べて判断
  ・「正月」「お祭り」「旅行先」などのシチュエーション

▼店舗内消費者行動における状況要因
 計画購買と非計画購買
 ・非計画購買の4類型
  ・想起購買:店頭で必要性を認識する
    →商品の必要性を喚起する売場内広告の設置など
  ・関連購買:購入した他の商品との関連から購入
    夕食のメニューにしたがって購買する場合など
    →関連のある商品を接近させて陳列
  ・条件購買:そのうち買おうと思っていたものを購入
    →「本日限り」「今が旬」などと訴える
  ・衝動購入:その場で欲求が喚起される
    →売場で調理し食欲を刺激,商品の希少性などをPR

◆トピックス:
【店舗内での販売促進のための陳列技術】
  ・パワー品目の活用
    肉・魚・野菜・卵・牛乳などを分散配置
  ・大量陳列
  ・右側優位の原則
  ・バーチカル(垂直)陳列
  ・エンド(端)陳列
  ・関連陳列

▼消費者に影響を与える状況要因
・コミュニケーション状況
  商品に関する情報がどのように伝達されるか
  ・店員や友人との会話など(パーソナル)
  ・広告,出版物など(インパーソナル)

・購買状況
  製品やサービスを得る場面の状況
  1.情報環境
    情報の利用可能性,情報付加,情報の提示方法など
  2.店舗環境
    レイアウト,色彩,照明,音楽,におい,温度など
    ◆実証研究の結果から:
     ・テンポの遅い音楽→買物時間・買物量が増える
     ・適切な色彩:内装=寒色,外装=暖色
     ・混雑→買物時間の短縮,店員との接触の減少
  3.時間の影響
    季節,時刻,買物に使える時間の量など







━━━━━━━━今回ここまで━━━━━━━━


2−7.対人・集団の要因と消費者行動

▼口コミと消費者行動
・口コミ
  =商品やサービスについて消費者同士で行われる
   コミュニケーション

・口コミが発生する条件
  ・製品の評価が難しい場合
     情報不足,能力不足など
  ・人に聞くことが手軽な手段である場合
  ・「話したい」と思う場合
     製品への強い関心,役に立ちたいという気持ち

・口コミの特徴
  ・非計画的 ⇔広告
  ・発信者によって一度処理された情報
   →受信者は理解しやすい
   →偏った情報となる危険性も

・購買決定における口コミの役割
  ・広告が有効:ブランドの認知や魅力増大
  ・口コミが有効:ブランドの評価や採用

▼情報の伝播と消費者行動
・情報の2段階の流れとオピニオンリーダー


・オピニオンリーダーの特徴
 ・商品情報に精通し,人を納得させる力量を持つ
 ・偏らずに情報を評価する能力を持つ
 ・活動的・社交的
 ・社会地位や価値観が類似したリーダーが信頼される
 ・新製品の購入が早く,他者の購入のリスクを低減させる

・ネットワーク型の新しいオピニオンリーダー
 ・情報発信能力の他に,情報受信力,情報処理能力が重視される

・新製品の普及とイノベータ
 ・イノベータ(革新者):最も早い時期に製品を採用する人;
    全体の2.5%程度
 ・採用の流れ:イノベータ→初期採用者
        →前期多数採用者→後期多数採用者→遅延者
 ・オピニオン・リーダーほど社会的関係は強くない

▼集団の影響と消費者行動
・集団への同調と逸脱
  ・同調行動:集団や社会に合わせた態度や行動の変化
   ・集団の期待に添うための行動
   ・確かな選択基準がないので集団の行動を真似る行動
   ←→逸脱行動

・流行についてのジンメルの理論
 =同調の欲求と差別化の欲求の拮抗

・準拠集団と消費者行動
 ・準拠集団=人の判断の拠り所となる集団
  ・さまざまなグループが準拠集団となりうる
   ・会社・学校などの公式集団
   ・友人,知人,近隣の人などの非公式集団
   ・芸能人や著名人など

 ・準拠集団を意識させる広告戦略
   ・専門家:客観性・信頼性をイメージさせる
   ・憧れの集団:素敵な生活をイメージさせる
   ・自分と同程度の集団:常識を想定させる

 ・生活様式の多様化により,準拠集団の与える影響は
  小さくなっていると考えられる


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