消費者行動論 #4
2002/10/31
■メッセージ紹介
●なんか言葉がむずかしかったです。目標状態の上昇と,初期状態の低下で欲求が増大する,その通りだと思いました。
●「限定品」「お買い得」「新製品」「あとお一人様のみ」の言葉に消費者は弱いです。販売のバイトをした時に,実際にそういう文句で売上げが伸びました。特に主婦層は安さを強調すると売れ行きが良くなります。
●毎日の生活の中で,消費者として買い物をする場合,私はあまり価格のことを気にしていませんでした。しかし,消費全体における自由裁量的支出の増大ということを聞き,買っても買わなくても良いものを価格をあまり気にせず買っていた自分をあらためて知りました。
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2.消費者行動の心理学
★消費者行動の心理学的研究の動機
=マーケティングにおける必要が大きい
《人はどうしてモノをほしがるのか?》
⇒《どうすれば売れるか?》
★心理学者レヴィンによる行動の一般的法則
2−1.問題解決としての購買意思決定
購買意思決定は,一種の問題解決行為
→問題解決過程として捉える
▼問題の認識
・現実の状態(初期状態) …例:空腹
・目標状態 …例:空腹が満たされた状態
……この2者のズレが大きいとき,問題が認識される
▼購買意思決定問題が認識されやすくなる条件
(1) 目標状態の水準(またはその知覚水準)の上昇
…広告や知人の薦めなどによる欲求の増大
(2) 初期状態の水準(またはその知覚水準)の低下
…現状への不満の増大
▼認識の状況
(1) ルーチン的問題解決 routine problem solving
反復的な購買行動;想起される選択肢がひとつだけ
例:いつも使っているものを切らした
(2) 限定的問題解決 limited problem solving
製品についての知識があり,いくつかの選択肢が
想起される
例:コンビニで飲み物を買う
(3) 広範的問題解決 extensive problem solving
製品についての学習を要する
例:パソコンを買う
━━━━━━━━前回ここまで━━━━━━━━
▼問題認識のされ方
・どのように問題を認識したかが意思決定に大きく影響
・問題認識の心理的構成による意思決定の変化
=フレーミング効果
(問題A)
12500円のジャケットと1500円の電卓を購入しようとしたところ,自動車で20分かかる支店に行くと1500円の電卓が1000円で売られていることを知った。
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(問題B)
12500円のジャケットと1500円の電卓を購入しようとしたところ,自動車で20分かかる支店に行くと12500円のジャケットが12000円で売られていることを知った。
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・心理的財布:状況依存的な問題認識
同じ商品に同じ金額を払った場合でも,満足感や
心理的痛みが異なる
表:種々の心理的財布とそれらに対応する商品
(小嶋・赤松・濱,1983 を改変)
心理的財布の因子
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対応する商品の例
ポケットマネー因子
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頭痛薬,ビタミン剤,目薬,週刊誌,ガム,チョコレート,募金
生活必需品因子
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冷蔵庫,洋服ダンス,洗濯機,カラーテレビ,外出着,ハンドバッグ,電子レンジ,家族旅行の費用,ルームクーラー,化粧品
財産因子
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分譲土地,分譲マンション,建売住宅,自家用車,ピアノ
文化・教養因子
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絵・彫刻の展覧会,音楽会,観劇,レコード,楽器,映画
外食因子
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外食代,喫茶代
生活水準引き上げ因子
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カセットテープレコーダー,電子レンジ,ルームクーラー,百科事典,8ミリカメラ,ピアノ
生活保障・安心因子
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火災保険料,生命保険料,お中元・お歳暮
ちょっとぜいたく因子
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ビデオデッキ,食器洗い機,乗用車
女性用品因子
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装飾品,ハンドバッグ,外出着,化粧品 |
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2−2.消費者の知覚
※知覚=心理学用語;
外界の情報を五感を通じて入手し,意味づけすること
※ここでは特にマーケティング情報の知覚を扱う
▼知覚と情報処理過程

▼接触過程
・接触の選択的性質
人は接触する刺激(*)のすべてを受容するわけではない。
→接触の回避;例:テレビCM,ダイレクトメール
*刺激:心理学用語。人間の行動を,外界の刺激に対する反応として捉える。
▼注意過程
・刺激要因
・物理的特性:大きさ,色,音,動きなど
・認知的特性:孤立,対比,情報量など
・情緒的特性:子ども,動物,女性モデルなど
・個人要因
個人的な興味,価値観,ニーズなどが注意に影響を与える
・環境要因
時間の余裕,気候の快不快など
▼解釈過程
解釈=刺激に意味を割り当てること
・自動処理
・見慣れた刺激→自動的に処理
・見慣れない刺激→注意を働かせ意識的に処理
・理解レベル
・同じ商品を見ても理解のレベルによって受け取る意味が
異なる
・深く理解された商品は,より強く記憶される
▼知覚とマーケティング戦略
※復習
●マーケティング・ミックス(4P)の構築
(1) 製品 product
(2) 価格 price
(3) 流通 place
(4) 販売促進 promotion
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・製品
・ブランド・イメージ
・ブランドについての知覚の総合されたもの
・購買行動の基準となる
→ブランド戦略:
競合するブランド間でどのような位置をとるか
・ブランドネーム,ロゴ,パッケージデザイン,広告
=商品解釈に影響を与える
・価格
・端数価格:数字から受ける印象をもとに価格設定
・威光価格:高い価格設定→高品質・ステータスのイメージ
・慣習価格:固定化して,価格で判断されない
例:清涼飲料水
・流通
小売業者:消費者の情報との接触に工夫
例:陳列棚のレイアウト,商品ごとの陳列場所
・販売促進
接触を増やし注意を向けさせるためにさまざまな工夫
・メディア戦略
・ランダムな接触を増やす戦略
・ターゲットを絞った戦略
2−3.消費者の動機づけ
▼欲求(ニーズ)の階層構造
・マズロー(1970)による整理
(1) 生理的欲求 physiological needs
生理的自己の維持;食欲など
(2) 安全欲求 safety-security needs
苦痛・恐怖・不安・危険などを避け,安定を求める
見慣れたものを求める欲求も含まれる
(3) 所属と愛の欲求 belongingness-love needs
(または 社会的欲求 social needs)
他者との友好・愛情関係や集団への所属を求める
(4) 自尊欲求 esteem needs
自己に対する高い評価を求める
業績,技能,資格,自信,評判,注目などへの欲求
(5) 自己実現欲求 self-actualization needs
自己の成長や発展の機会を求める
この欲求だけは,満足されるとさらに欲求が強まる
・消費者行動との関連
現代の消費パターンの多様化
=自尊欲求や自己実現欲求の高まりの現れ
▼購買動機の要因
・必要条件
・購入にあたって最低限求める品質
・魅力条件
・品質とは無関係に満たしていて欲しい思う条件
▼モチベーション・リサーチ
(深層心理的アプローチ)
…主として面接による購買行動の詳細な研究
・無意識・潜在意識の発見
…購買意志決定における消費者本人が意識していない要因
・非合理的・非論理的・情緒的な要因の重視
…人々が言う購買理由は「合理化」であることが多い
[消費者行動論2002 Top]
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