No.24 辻斬り

 江戸時代、庚申待の夜には、町内の若い者達はここかしこに集まって、一晩中バカ話をして夜の明けるのを待っていた。その折の左官の吟ちゃんの話。

 
吟ちゃん:夕べのことだよ。俺は、仕上げ仕事に手間取って小石川の仕事場を後にしたのは四つが少し回った頃だと思いなせぇ。あれから、御茶ノ水のあたりまで来ると雨は降ってくるし、神田川の水音はザーざ〜ってそりゃさすがの俺も身震いするくれぇさみしいんだよ。すると、丁度そこへ、「チャメシー、アンカケー」「チャメシーアンカケー」って茶飯屋の親父さんが屋台を担いで現れたってわけよ。俺はほっとして、茶飯にアンカケでもぶっ掛けて食おうと思って、「オヤッサン!!」て声を掛けようとしたその矢先よ。脇から、黒頭巾に黒覆面の大男がスーッと出てきやがって、それこそ一太刀で、。・・・

若い衆:「え?! 真っ二つかい?」

吟  :「そうじゃねぇ。真っ二つになったのは屋台の方なんだ」

若い衆:「それで茶飯屋のオヤジさんはどうなったんでぇ??」

吟  :「オヤジさんはどうもならねぇ。その代わり屋台が切られたもんだからあたり一面茶飯にアンカケでワーッとなってよぉ、見られたもんじゃねぇのよ。みんなぁ、こりゃあ何だと思う?」

若い衆:「辻斬りだろうよ。未熟な野郎だからオヤジさんを斬ろうとして手許が狂って屋台を切ったてぇわけにちげぇねぇ!」

吟  :「そうじゃねぇ、俺が思うにゃぁこりゃぁチャメシギリさぁ」

若い衆:「???」