役所日記

喜多村信節『筠庭雑録<いんていざつろく>』所収

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 明後十三日神田上水道水上惣払有之候間、致相対候町々は桃青方へ急度可申渡候。桃青相対無之町々、月行事、明十二日早天に杭木かけや水上へ致持参、丁場請取可申候。勿論十三日中は水きれ申候間、水道取候町々は、左様相心得、可相振候。若雨ふり候はば、惣払相延候間、左様心得可申候。

六月十一日

 みょうご13にちかんだじょうすいどうみなかみそうばらいこれありそうろうあいだ、あいたいいたしそうろうちょうちょうはとうせいかたへきっともうしわたすべくそうろう。とうせいあいたいこれなきちょうちょう、つきぎょうじ、みょう12にちそうてんにくいきかけやみなかみへじさんいたし、ちょうばうけとるべくそうろう。もちろん13にちはみずきれもうしそうろうかん、すいどうとりそうろうちょうちょうは、さようあいこころえ、あいふれもうすべく。もしあめふりそうらはば、そうばらいあいのばしそうろうあいだ、さようこころえもうすべくそうろう。


  • 訳)  明後13日に神田上水のメンテナンス工事を行うが、芭蕉とメンテナンス契約をしている町々は、芭蕉にその旨急いで連絡(確認)せよ。そうでない町々では今月の月番が明日12日杭や掛け矢を落合(現在の早稲田の北、水道神社・関口芭蕉庵近くの江戸川公園大滝橋付近)まで持参して、担当部署を確認すること。当然、工事当日の13日には神田上水道は配水が止まるので、給水地域の町々はそのことを確認するよう周知すること。また当日雨が降ったら工事は延期となるので、そう心得ること。


  • 喜多村信節<きたむらのぶよ>(1783〜1856)。江戸後期の国学者・考証学者。江戸の人。名は節信(ときのぶ)ともいう。市中や民間の風俗・伝承を記録・考証した。著「嬉遊笑覧<きゆうしょうらん>」「瓦礫雑考<がれきざっこう>」など。 (『大辞林』より)。筠庭<いんてい>は信節の号。江戸町年寄三家の一つ名門喜多村家の出身。