俳諧書留

新庄

目次

出羽三山へ


   新庄

御尋に我宿せばし破れ蚊や   風流

はじめてかほる風の桾ィ    芭蕉

菊作り鍬に薄を折添て     孤松

霧立かくす虹のもとすゑ    ソラ

そゞろ成月に二里隔けり    柳風

馬市くれて駒むかへせん     筆

すゝけたる父が弓矢をとり傳   翁

筆こゝろみて判を定る      流

梅かざす三寸もやさしき唐瓶子  良

簾を揚てとをすつばくら     如柳

三夜見る夢に古郷のおもハれし 木端

浪の音聞嶋の墓ハら        風

雪ふらぬ松はをのれとふとりけり  柳

萩踏しける猪のつま        翁

行盡し月を燈の小社にて      松

疵洗ハんと露そゝくなり      端

散花の今は衣を着せ給へ      翁

陽炎消る庭前の石         良

樂しミと茶をひかせたる春水    流

果なき戀に長きさかやき      端

袖香爐煙は絲に立添て       風

牡丹の雫風ほのか也        柳

老僧のいで小盃初んと       翁

武士亂レ入東西の門        良

自鹿も鳴なる奧の原        端

羽織に包む茸狩の月        流

秋更て捨子にかさん菅の笠     柳

うたひすませるミのゝ谷ぐミ    翁

乘放牛を尋る夕間夕        風

出城の裙に見ゆるかゞり火     端

奉る供御の肴も疎にて       翁

よごれて寒き彌宜の白張      流

ほりほりし石のかろとの崩けり   風

知らざる山に雨のつれづれ     柳

咲かゝる花を左に袖敷て      端

鶯かたり胡蝶まふ宿        良

   風流亭

 水の奥氷室尋る柳哉         翁  

ひるがほかゝる橋のふせ芝      風流  

風渡る的の變矢に鳩鳴て       ソラ

   盛信亭

風の香も南に近し最上川        翁

小家の軒を洗ふ夕立      (息)柳風

物もなく麓は霧に埋て        木端