芭蕉db
  神無月二十日、深川にて即興

振売の雁あはれなり恵美須講

(炭俵)

(ふりうりの がんあわれなり えびすこう)

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 元禄6年10月20日、50歳。深川で 野坡・孤屋・利牛と四吟歌仙の発句として詠まれた句。『炭俵』に掲出。

振売の雁あはれなり恵美須講

 10月20日は恵比須講。恵比須講は商人の祭。稲の収穫から始まり、大根や菜の収穫、サツマイモの収穫から麦播きなど秋の繁忙な農事を終えた百姓たちを顧客として冬に備える商品を売りさばこうという商魂から始まった。いわば秋物一掃セールである。そんな賑わいの中、行商の振り売(多くは天秤棒に商品をぶら下げただけの零細商人)がぐったりした雁の死体を売り歩いている。この雁、北を指して長い旅路の途中に病雁となって大地に下りたところを捕らえられたものであろう。街中の華やいだ喧騒と死んだ病雁と貧しい振り売を描き出す見事な作品。
 なお、恵美須講については、他に「恵比須講酢売に袴着せにけり」がある。