徒然草(下)

第212段 秋の月は、限りなくめでたきものなり。


 秋の月は、限りなくめでたきものなり。いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分かざらん人は*、無下に心うかるべき事なり*

いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分かざらん人は:秋の月とそれ以外のシーズンの月との違いが分からずに、いつの月だって月は月だなどと無神経に思っている人は、。

無下に心うかるべき事なり:こういう人はどうしようもなく情けない。


 月にかかる美意識。秋の月は格別の月。


 あきのつきは、かぎりなくめでたきものなり。いつとてもつきはかくこそあれとて、おもいわかざらんひとは、むげにこころうかるべきことなり。