いまさらの人などのある時*、こゝもとに言ひつけたることぐさ*、物の名など、心得たるどち*、片端言ひ交し、目見合はせ、笑ひなどして*、心知らぬ人に心得ず思はする事*、世慣れず、よからぬ人の必ずある事なり*。
今様の事どもの珍しきを、
-言ひ広め、もてなすこそ、またうけられね :「今様の事ども」とは、最近の評判の話題の事と思われる。それを言いふらし、むやみに騒ぐことなどは、どうもお受け入れ難い。
世にこと古りたるまで知らぬ人は、心にくし:かえって、そういうことを知らない人の方が、私には心にくいまでに感ずるよ。
いまさらの人などのある時:「いまさら」は今、更に来た人、の意 で、新参者のこと。
こゝもとに言ひつけたることぐさ、物の名など、:自分たちにだけ分かる事柄や、物の名前。
心得たるどち:「どち」は「同士」。知っているもの仲間。
片端言ひ交し、目見合はせ、笑ひなどして:ジャーゴンを使い、目配せして、笑ったりなどして、要するに自分たちだけに分かる話をして。
心知らぬ人に心得ず思はする事:事情を飲み込めない人に、自分が心得ないと思わせること 。
よからぬ人の必ずある事なり:無教養な人たちの必ずすることである。
コミュニティ論とも、コミュニケーション論とも取れる話。具体的にはこの種の問題が何かあったのかどうか?
いまようのことどものめずらしきを、いいひろめ、もてなすこそ、またうけられね。よにことふりたるまでしらぬひとは、こころにくし。
いまさらのひとなどのあるとき、ここもとにいいつけたることぐさ、もののななど、こころえたるどち、かたはしいいかわし、めみあわせ、わらいなどして、こころしらぬひとにこころえずおもわすること、よなれず、よからぬひとのかならずあることなり。