朝夕、隔てなく馴れたる人の*、ともある時*、我に心おき、ひきつくろへるさまに見ゆるこそ*、「今更、かくやは*」など言ふ人もありぬべけれど、なほ、げにげにしく、よき人かなとぞ覚ゆる*。
疎き人の、うちとけたる事など言ひたる、また、よしと思ひつきぬべし*。
朝夕、隔てなく馴れたる人の:日常的に、慣れ親しんでいる人。ここは女性。
ともある時:ふとした時。
我に心おき、ひきつくろへるさまに見ゆるこそ:私に気 配りして、改まった身なりなどしているように見えるとき程、。
今更、かくやは:何を今さら。どうしてそんな他人行儀な態度をとるのですか?の意。
げにげにしく、よき人かなとぞ覚ゆる:「げにげにしく」は 、「実に実にしく」で肯定的に使われて「実がある」の意。真実味があってよい人だと思う。
よしと思ひつきぬべし:よい人だということに気づかされるであろう。
他者とのコミュニケーションについて
あさゆう、へだてなくなれたるひとの、ともあるとき、われにここおき、ひきつくろへるさまにみゆるこそ、「いまさら、かくやは」などいうひともありぬべけれど、なほ、げにげにしく、よきひとかなとぞおぼゆる。
うときひとの、うちとけたることなどいいたる、また、よしとおもいつきぬべし。