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財団<産業情報山梨>誌1999年2月号巻頭言原稿『自己実現と資本主義』
マルクスによれば,近代資本主義という構造は,もっと早い時機に崩壊するはずでありました.何しろ,その仕組みときたら「大量生産」であり,それは必然的に「大量消費」する市場を必要とし,スミスの言う「神の見えざる手」にいざなわれて多くの資本家がここに大量の商品を流し込み,結果的に市場はすぐに飽和します.やがて,デフレが発生して経済は崩壊し,そこに経済恐慌という病気が猖獗(
しょうけつ)を極めます.事実,世界的規模の恐慌だけでも,1873年,1893年,1920年,1929年というように,まるでペストのようにおよそ20年おきに発生しました.