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卯七曰、先師は俳諧の法式を用ひ給はずや
卯七曰、先師は俳諧の法式を用ひ給はずや 。
去來曰、成ほど用てなづみ給はず。思ふ所有時は古式を破給ふ事も有*。去レ共私には破らるゝは稀也*。第一先師の俳かいは只長頭丸以後のはいかいを以て元來とし給はず 、只代々の俳諧躰に本づき給へり*。付句は已に久しと言へども、連俳となるは長頭丸以来にして未法式なし*。仍而連歌の式をかり用ひらる。重而俳諧の法式を改作にも不レ及。又上より定たる式にもあらず。若其人あらば是を損益あるとも罪あるまじ。其時の宗匠達は、皆元來連歌師たるゆへ、連歌の式をかり用ひらるゝ也。退て思ふに、今日の先師、もしその時にいまさば連歌によらず、俳諧の式は立つべし*。世の人は俳諧を連の奴僕の様に思へり。先師の沙汰は格別也*。