- 「芭蕉db
鵜 舟
- (貞亨5年6月:45歳)
鵜飼の図(「芭蕉翁絵詞伝」(義仲寺蔵))
- 岐阜の庄長柄川*の鵜飼とて、世にことごとしう言ひののしる*。まことや、その興の人の語り伝ふるにたがはず、淺智短才の筆にも言葉にも尽すべきにあらず*。「こころ知れらん人に見せばや」*など言ひて、闇路に帰る、この身の名残惜しさをいかにせむ*。
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(おもしろうて
やがてかなしき うぶねかな)
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- ほとんど謡曲『鵜飼』を下地にした句。それだけに作為を感ずるが、句単独の深みは大変なもの。芭蕉作品中の最高傑作の一つ。
- この際、「又やたぐひ長良の川の鮎鱠」とも詠んだ。
なお、この作品は、松永貞徳の「おもしろうさうしさばくる鵜縄哉」の影響下にもある。
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岐阜市長良川畔の句碑。牛久市森田武さん提供
長柄川:<ながらがわ>。岐阜長良川のこと。古来鵜飼漁で有名。
- 世にことごとしう言ひののしる:世間では大変評判になっている、の意。
- 淺智短才の筆にも言葉にも尽すべきにあらず:<せんちさいがくの・・>と読む。学の無い私には書き表すことも言葉で説明することも不可能です、の意
- 闇路に帰る:謡曲『鵜飼』中、「・・・・鵜舟のかがり影消えて、闇路に帰るこの身の、名残惜しさをいかにせん・・・・」から引用。ここに闇路はあの世を指す。
甲州石和(現山梨県笛吹市)の笛吹川で禁断の殺生をしたために地獄に堕ちた亡霊が、朝の到来とともにあの世に帰る無念を表す。