芭蕉db

権七にしめす

(貞亨4年11月12日:44歳)

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  旧里を去てしバらく田野に身をさらす人あり。家僕何がし水木のために身をくるしめ*、心をいたましめ、其獠奴阿段が功をあらそひ*、陶侃が胡奴をしたふ*。まことや道ハ其人を取べからず、 物ハそのかたちにあらず。「下位に有ても上智の人あり」といへり。猶石心鉄肝たゆむ事なかれ。主も其善のわするべからず。
 

先いわへ梅をこゝろの冬篭

 

( まずいわえ うめをこころの ふゆごもり)

                  芭蕉


 『笈の小文』の旅の 途次、渥美半島保美の里に門人杜国を訪ねた折に、杜国の下僕権七に感謝の念とともに書き与えたもの。説教調でもあるが、末尾に杜国への忠告もあって面白い。