芭蕉db

笈の小文

(四月朔日)


衣更*

一つぬいで後に負ぬ衣がへ

(ひとつぬいで うしろにおいぬ ころもがえ)

吉野出て布子 賣たし衣がへ  万菊

(よしのいでて ぬのこうりたし ころもがえ)


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一つぬいで後に負ぬ衣がへ

  4月朔日は冬から夏への衣更え。家に居れば箪笥から夏物の着物を出して儀式ばった衣更えをするのだが、旅にしあれば上着を一枚脱いで背中に担げば衣更えになる。すべてを捨てた旅人なればこそ気軽に過ごせる衣更えの行事である。季節の歌の秀句の一つ。
この時代貴族や武家はもちろんのこと、民間でも衣更えの行事を、夏は4月朔日、冬は10月朔日に盛大にやっていた。


和歌山県那賀郡粉河町粉河粉河寺境内の句碑。牛久市森田武さん提供


衣更:<ころもがえ>と読む。4月1日。