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芭蕉DB
野ざらし紀行
(當麻寺)
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二上山當麻寺
*に詣で
ゝ、庭上の松をみるに、凡千とせもへたるならむ*。大イサ牛をかくす共云べけむ*。かれ非常といへども*、仏縁に
ひかれて、斧斤の罪をまぬがれたるぞ*幸にしてたつとし。
(そうあさがお いくしにかえる のりのまつ)
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表紙 年表
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たまたま仏縁に恵まれた老千年の松からみれば、この寺の僧侶の命は朝顔の花のような短さに違いない
。それなのに、この長い年月変わらず伽藍が保たれていることこそ代々の僧の信仰の証しと実に尊いことだ。
当麻寺にある句碑(牛久市森田武さん撮影)
二上山當麻寺:奈良県当麻町(たいまちょう)にある二上山禅林寺。聖徳太子の弟麻呂子王の建立によるとされる
。
凡千とせもへたるならむ:<およそちとせも・・>と読む。樹齢1,000年を越えるかと思われる松の老木。
大イサ牛をかくす共云べけむ:『荘子』から引用。「檪社<れきしゃ>の樹を見るに其の大いさは牛を蔽<かく>す」。
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当麻寺本堂(森田武さん提供)
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かれ非常(情)といへども:「松には心はないとはいうものの」の意。
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斧斤の罪をまぬがれたるぞ:<ふきんのつみ>と読む。仏縁があったから、ここに植えられたおかげで切られずにすんでいるの意。